潰瘍性大腸炎

首相の潰瘍性大腸炎を治せず辞任させた現代医療。病気生む社会を見直そう

投稿日:2020年8月31日 更新日:

2020年(令和2年)8月28日の記者会見で、安倍首相が辞意を表明しました。理由は潰瘍性大腸炎の再発。一国の首相に対して当然日本の最高の医療が施されたはずですが、治すことができなかったということですね。
この事実に対して、潰瘍性大腸炎患者の方はやっぱり治らない病気なんだ、と落胆したかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。
わたしは一度潰瘍性大腸炎と診断されて、いつか大腸がんになって死ぬかもしれないリスクに絶望しましたが、今は薬なしで、好きなものを食べられる日常生活を1年以上保てるようになっています。

公的な医療機関に頼ることはできない病気

 公的な職についていた首相という立場では、公的な医療機関にかかるしかありませんが、潰瘍性大腸炎は「治療方法が確立していない」ので指定難病に認定されています。つまり公的な医療機関では治療できる保証はないということを、はっきり認めています。

 現代医療は対症療法であり、そもそも潰瘍性大腸炎だけでなく慢性病全般に対しては無力であるということは、もうある程度広く知られているかもしれません。

初めて聞くという方向けに説明すると、現代医療では患者さんの病気に対して、症状を治す治療を行い、病気が生じた原因(患者さんの体質等)については特に対処しません。これを対症療法と言い、急性疾患に対しては非常に再現性が高く効率的なので、結果として多くの患者さんを短期間で治療できて素晴らしいので採用されています。しかし、慢性病に対しては、症状だけを治しても病気の原因が残っているので、また再発し、また症状だけ治し…の繰り返しになります。

 潰瘍性大腸炎のような慢性病は医療機関に頼るだけでは足りない、ということは明らかで、患者さん側で生活環境や生活習慣を変化させる必要があるということです。
 そして、残念ながら、どう変化させればよいかについては、医師に聞いてもあんまり教えてもらえません。医師もそこに関しては教育されていないので知識があまりないからです。食事が大きく影響することは容易に想像されますが、現状医学部では栄養学も教えられていませんので、期待できないという事実も知っておいた方ががっかりせずにすみますね (これも、現代とは異なり昔は普通の食事で栄養が摂れていたので必要性が高くなかったという理由があるのでしょう)。

 もちろん、医師は高い志を持っている方が多いので、こうした問題に気づいて努力し始めている方も出てきています。

医療構造を理解すれば、患者自身の行動が必須ということに気づく

 上記のように、現代医療では対症療法を採用しているので、潰瘍性大腸炎を治すことはできません。
 さて、今度はこれを医療の構造という観点で捉えなおしてみましょう。

  • 医療機関は、患者さんに何かを投与したり、施術したりという、「一時的なプラスの作用を与えること」しかできません。
  • 病気のもとになった悪い生活環境、生活習慣を直すという、「継続的なマイナスの作用を減らすこと」は患者さん自身で行動しない限りもたらされません。

 どんなにプラスを与えても、それをはるかに上回るマイナスが絶えず供給され続ければ、当然再発するということですね。
 個人の生活環境、生活習慣に医師が直接手を出すのは人権侵害になってしまいますから…これが、医療構造による限界ということです。

 この医療構造の限界を理解していれば、慢性病に関しては患者さん自身が行動しないで治すのはそもそも無理筋と言えますね。これを常識にしましょう。

 現代医療の無力さを強調してしまいましたが、医療機関も真摯に研究を重ねて進歩し続けていることも補足しておきます。
 私は自分の潰瘍性大腸炎を治すのに食物繊維を摂ったほうが良いと自分で判断して、結果として治すことができました。当時は食物繊維は潰瘍性大腸炎では避けた方がよいとされていたので思い切って決断する必要がありましたが、それから数年が経った令和元年の資料では、食物繊維も摂取したほうが良い場合もあるということも書かれていて、情報が更新されたことに医療機関のがんばりを感じました。

難病のもたらす悩ましい事態が今後も更に増え続ける

 安倍首相の辞意表明に対して、「大事な時に体を壊す癖」という表現をした議員がいました。これは、私自身もちろんそういう風に思われるのは嫌でしたが、健康な人からしたら発想として普通に浮かんでくるだろうなとも思います。
 これを批判する気はほぼ起きないです。体験していない人にこの大変さが理解できるわけないから仕方ないな、と思うからです。それくらい本当に大変ですからね。意志でどうにかなるレベルではないこの切実さはわたしも体験するまでは未知の感覚でした。
 なので、不毛な議論になるので善し悪しを考えるのはやめましょうというだけですね。首相を必要以上に労うこともないし、議員を批判し過ぎる必要もないと思います。政治内容だけで議論してくださいというだけです。

 さて、それよりも、このような悩ましい事態は難病に対していつでも起こりうるということに目を向けてみましょう。それでも労働機会は平等に与えられる社会であるべきと思いますが、実際ストレスでダウンされると困るというのも事実ですよね。

 潰瘍性大腸炎の患者数はこの30年で10倍以上に増加しています(2016年度には16万7,872人)。上記のような悩ましい事態が今後増加し続けてもおかしくありませんね。
それでいいのでしょうか…?

(難病情報センターHPより)

慢性病が増加している現代社会で、健康管理は個人の問題とだけ考えていてよいのか?

 潰瘍性大腸炎の増加の原因は、食事を含む生活習慣の西洋化の影響も大きいと考えられています。つまり、社会の価値観(生活環境、生活習慣)の変化によって、普通に生活しているだけで潰瘍性大腸炎になってしまう人が増加したということです。逆に言うと、社会の価値観が異なる方向に変化すれば、潰瘍性大腸炎になる人が減る可能性もあるということです。
 医療構造の話で、根本原因である生活環境、生活習慣は患者側で直さないと病気は治らない、ということを明らかにしました。これも、逆に言うと、生活環境、生活習慣が病気を生まないものであれば、病気にならないということです。
 つまり、また繰り返しになりますが、社会の価値観を異なる方向に変化させれば、難病になる人を減らせるということです。

  • わたしたちは、健康管理は個人の問題と考えていますが、本当にそうでしょうか?
  • 社会の価値観を変えることで、不健康な人を減らすことができると思いませんか?

 首相が潰瘍性大腸炎で辞任する国になったことは、社会の価値観を見直すべき事態だと、わたしは感じました。

 医療の発展を待てば、こういう事態は防げるのでしょうか。医療構造の限界を考えると、ちょっと期待できないのではないかと、わたしは思います。

 自然に生活していて病気になることが少ない、そんな社会の価値観(生活環境、生活習慣)を模索していきませんか?

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